キッチンバサミは便利です。
調理にハサミを使うよりも、食事でハサミを使うことの方が多いです。
患者にも、食事で ハサミを積極的に使うことをすすめてきました。
入れ歯(義歯)、 仮歯(TeC)や歯科矯正装置をいれた患者には「前歯で かみ切れないので、キッチンバサミを使ってくれ」と説明します。
患者から「おすすめのキッチンバサミがあるのなら 売ってくれ」と言われます。
食事の時に使いやすい料理ハサミ、「これは!?」なものを見つけたら買って試しています。今後も探求は続くでしょう。
キッチンバサミの情報を整理するため、
2千円以下で買える キッチンバサミの長期使用レポートのまとめ
を記事にしました。
キッチンバサミ / 料理 ハサミ って何?
主に台所で使うハサミのことをキッチン鋏(キッチンハサミ)、料理用鋏(りょうりハサミ)と言います。
- 洗っても錆びない
- パッケージや食品まで切れる
- 落花生、ピスタチオ、クルミの殻が割れる
- カシメ(支点、軸)を外して洗える
- カニやエビ、魚の硬いところが切れる
などの特長があります。
キッチンバサミを選ぶポイント
- 値段
- 大きさ、全長と刃の長さ
- 重さ
- 材質
- 手入れのしやすさ
で選びます。
キッチンバサミの ここを見て買え!的な 使い勝手の良さ は?
キッチンバサミを選ぶ上で いちばん大切なこと「使いやすさ」は、3つの項目をチェックします。
以下の3点を満たしているものが良い キッチンバサミです。
- 樹脂の柄のキッチンバサミが軽くて取り回しが良い
- 切刃が点で擦れあうことで、軽く滑らかに切れ味が良い
- カシメ部(ネジ、支点軸)が取り外せるものは、ガタつかない
あと、おしげもなく 買いかえることのできる値段…。
値段が安いこと
ハサミは寿命が短くて、1〜2年で新しい物に買い換えるものですから、安い方が良いです。
かといって、100均やホームセンターで売っている110〜800円の安いキッチンバサミは、すぐに切れなくなります。浸け置き洗いで さびるし。
なので、私は、千円〜2千円のキッチンバサミの中で良い物を探しています。
ハサミの重さは、100g以下を選ぶ
手に持つ道具は、100gを超えると重く感じます。
枝の部分まで全部ステンレスの高級なキッチンバサミは、150gを超えて重すぎて使いづらいです。
どこのメーカーも、キッチンバサミの重さは150g以下に収まるように作っています。
軽いものは、ブレード(切刃)が薄かったり、カシメ(支点軸)が細かったりするので硬い物を切るとハサミがゆがんで切れなくなります。
はさみの大きさ と 切る時の力の入れやすさ
手で持つ道具は、手に収まる範囲になるので、大きさはどれもほぼ同じです。
- 切刃が長い→ 切刃の先に力がはいらず 先で切れない
- 切刃が短い → 切刃の先に力が入るので 軽く先で切れる
乾燥昆布や海苔、包装パッケージなど、薄い紙やフィルムを切るのなら、切刃の長い方が便利でしょう。
しかし、食事では料理バサミの先を使います。
切刃の長いハサミは、刃先に力が入らないので切れません。力いっぱい握りしめるので指や手が痛くなります。
材質
100円ショップで売られている 110円の調理バサミは、ステンレスではなく 鉄にクロムメッキした安物を使っているので、切れ味が悪いです。
ぬらしたままでほっとくと すぐに錆びます。
新品でも 支点(かしめ部)がガタついて刃が合わず切れないハサミも多いです
まともな ステンレス鋼は値段が高いので、500円以下で作れません。
手入れのしやすさ
箸やトング と同じあつかいで、洗剤をつけたスポンジで洗って、水洗いして、乾かします。
洗いやすいように、カシメのピン(支点軸)が外れるものも増えてきました。
支点(ネジ、カシメ)が外せる、はずせないで違いは?
カシメが外せるハサミの、
- メリット:洗えるので衛生的
- デメリット:切刃同士の接触点の調整が難しい
- 切れ味やハサミの動きが不安定
- すり減ってガタつくと切れなくなる
- 調整が難しくて手間がかかるので値段も高め
です。
よく切れて、開閉が軽いハサミは、切れるところだけ刃が点で当たっています。
切れるところ以外の切刃の間は接触せず隙間があいています。切刃どうしの摩擦がないので軽い力でハサミを動かせます。
丁寧に調整してある 日本のメーカーのもの(安いのは中国製造)を選ぶようにしましょう。
調理バサミとトングを食事で使う・フォークとナイフよりも便利
半分こにするのに、調理バサミが便利です。食べ物はトングでつまんで切ります。
右手でトング、左手でハサミで、フォークとナイフ変わりに使えます。
かじって食べることができない人は、食べる前に ひと口大に切って ハシでつまんで食べましょう。
キッチンハサミは、葱の輪切り、ソーセージの輪切りができない
調理バサミが苦手なのは、ネギを刻むような作業です。
ネギの緑の部分なら薄いので切れますが、根元の白い部分は身が詰まっているので、きれいに輪切りできません。
ソーセージの輪切りもです。
料理バサミは、ウインナー ソーセージを切ることが1番苦手です。
外科用の肉切りバサミですら、綺麗な輪切りができません。切れ口が汚くて、まずそうに見えますよね。
包丁でタンタンタンタンと切った方が速いし綺麗に切れます。
たこさんウインナーも、料理バサミでできません。
足が8分割できません。4分割ですら、こんな状態になります。
先を鋭く研いだペディナイフでサクサクと切りましょう。
日頃から料理バサミを使っていないのに、料理バサミがすごく便利だと嘘をついている人を見かけました。
ネギもソーセージもハサミでは、まともに切れませんよ。
インフルエンサーを気どるためには、SNSに有益な情報を書かなきゃいけないでしょうが…、嘘はいけません。
一般的な インフルエンサーのビジネスモデルについては、こちらで解説しています。
料理バサミで、豚テキや赤身の硬い牛肉ステーキを食べやすい大きさに切る!
ハサミの威力を1番実感できるのは、豚のステーキ・トンテキです。
しっかり火を通さないと食べられない豚肉は小さく縮んで硬くなります。
大きいままフライパンで焼いて皿に盛ります。食べる前にハサミで短冊状に切り刻みます。
前歯の良い人は、そのまま囓っても良いし、前歯でかみ切れない人は、細かく切って食べます。フォークとナイフより速く綺麗に切れます。
軍艦の半分こも、ハサミでパシッと切ります。包丁では、しめった海苔が切れない。
軍艦の種類が2個しかないのに、4人で分けるには、ハサミで半分こにするしかない。
イカ、ミル貝、たこなど、入れ歯でかみ切るのが難しい食べ物は、ハサミで1cm弱の幅で切り刻むと食べやすくなります。
手羽先のような骨がついているものは、切れ目を入れつつ、骨と肉の間にハサミの先をいれて開いて肉と骨を引きはがす「剥離鉗子」の要領で使います。
切るのではなく、「はさみの先を開いて 広げる」使い方です。
カツサンドは、1つしかはいっていないので、ハサミで半分こにします。
サンドイッチを2パック買って4人で分けるのに、カツサンドをどうする?の喧嘩になりません。
大福餅も、ハサミで切ると2つ、4つに綺麗に分けられます。
毎年、12月のクソ忙しい時に、干し柿をかじって前歯を折ってきて「正月までに なんとかしろ」と無茶を言う患者がいます。
ヘタの部分は硬いので、ハサミで切って実だけにします。ハサミで縦に切れ込みを入れてから指で割いて、種をはずしてから食べるようにしてください。
かたくなった干し柿は、1cm角に切り刻んで、口の中にいれて、つば(唾液)にひたして、ふやかしてから かみましょう。
噛みちぎれないので、大きいまま口に押し込んで喉に詰まらせて死にます。
噛みやすい一口大に切り分けるようにしましょう。
以上を踏まえて、
おすすめの調理バサミを紹介
ヴェルダン カラー カーブはさみ VCH-04B 下村工業 日本製 900円前後
新潟三条市の下村工業は、台所の刃物のブランドです。 Amazonでも、たびたびセールがあって入手しやすく人気です。
このVCH-04Bは、下村工業の調理バサミの中でも、小さめで軽いタイプです。
- 大きさ:18.5 × 8 × 1.1 cm
- 重さ:63g
- 刃が曲
- 切刃の長さ:7.4cm
- カシメはネジで外せない固定式
- 左手で持っても切れる
刃が曲がっているので、海老や小魚の下ごしらえにも使えます。
63gと軽く、切刃も短めで先まで力がかかるので切れます。
切刃は、ギザギザの加工のため滑らずに切れます。
支点の軸は取り外せません。ガタツキがないので、切れ味は安定しています。
食事の時に使うハサミとしても便利に使えます。
加工の丁寧さは、アゴの部分を手で触るとわかります。バリが残るような角の雑な処理だと手が切れます。
これは、手が切れるようなバリはありません。日本製です。
貝印 House Select キッチン鋏 セパレートタイプ HD-7157 中国製造 1300円前後
刃物といえば、貝印です。
どれか1本しか買えないのなら、これがおすすめです。オールラウンドに使えます。
少し重いけど、バランスが良い。先までよく切れる。
カシメ(支点軸)を外して洗えるのに、切刃のアタリが変わらない高精度な仕上がりです。
- 大きさ:19.3 × 8.6 × 1 cm
- 重さ:88g
- 粗目のギザギザ刃
- 切刃の長さ:7.2cm
- カシメ(支点軸、ネジ)が外せる
- 左手で持っても切れる
カシメ部が外せるので衛生的です。ただし、外せるピンタイプは長く使ってすり減ってくると、切刃の接触がうまくできなくなって切れなくなることがあります。
アゴの部分がABS樹脂で覆われています。
クルミや落花生などの殻のあるものをはさんで割る時、樹脂で噛ませるので、樹脂ごと割れる可能性があります。
数年経って樹脂が劣化してきて割れる頃には刃も切れなくなっているでしょうから、買い換えです。一生モノではありませんよ。
切刃のステンレス金属は日本製でも製造は中国です。なので安い。
貝印 関孫六(せきまごろく) キッチン鋏 HD-3353 日本製造 1300円弱
切れ味優先、軽く シンプルなキッチンバサミ。
ギザギザ刃ではないが バチバチ切れるので注意!
- 大きさ:19.5 × 9 × 1.2 cm
- 重さ:60g
- 切刃の長さ:7.2cm
- カシメ(支点軸、ネジ)が外せる
- 左手で持っても切れる
分解できて 簡単に洗える。
軽いかわりに剛性感がないので、ぶ厚く固い物を切ろうとすると”しなる”かんじがする。
クルミを割ったりする機能がいらないのなら、こっちが良い。
プラス キッチンバサミ フィットカットカーブ 35-119 中国製造 1500円前後
事務器のPLUS が、事務用のハサミをキッチン仕様にして販売しています。
前のモデルは、カシメ部分が??で寿命が短いものでした。
PLUSは、切刃の角度がどの角度を開いていても一定になる「ベルヌーイ曲線」を採用しています。
事務用に使っているハサミもPLUSですから、違和感はありません。
ただし、100g超えで重いです。
- 大きさ:20 × 8.4 × 1 cm
- 重さ:102g
- 細かいギザギザ刃
- 切刃の長さ:8cm
- カシメ(支点軸、ネジ)が外せる
- 左手で持っても切れる
切刃は8cmと長く、画用紙を切るイメージで、海苔や乾燥昆布を切ろうと設計したんでしょう。
バランスが悪く先が重いです。切刃が長いので、先に力が入りません。先でモノが切れません。
カシメの樹脂を改良しただけのハサミです。
カシメは外せない、軽いタイプのハサミの方が良いです。
ヘンケルス ケルン料理バサミ 11515-001 中国製造 1100円前後
ドイツ ヘンケルスのハサミや包丁、ナイフは、結婚式やイベントの景品や引き出物でおなじみです。
中国製造で、アゴのエッジも手が切れそうな仕上げなので、すこし研磨しました。
カーボランダムポイントを手に持って角を擦ってやると角が取れて滑らかになります。
中国製造ですから仕方がないとはいえ、その割に千円超えと高いです。
- 重さ:114g
- 切刃の長さ:7.5cm
ARS アルス クラフトチョキ 園芸用ハサミ EG-330H 日本製 1065円
コメントにて紹介いただいた 園芸用ハサミ「ARS EG-330H」。家庭菜園で使うのに適しています。
切刃が短く、握る柄が大きく柔らかい樹脂なのが特長です。力も入れやすく ビシバシ切れます。
カニの甲羅、足を切る、鳥の半身焼きの骨を切る など、切れすぎて怖いくらい。
鋼にクロムメッキなので、口に入れる食べ物を直に切るのには向いていない。
下ごしらえで使うには、最強のハサミでしょう。元々が収穫用だし。
先が尖っているので、サヤ(カバーケース)も付いています。
カラーバリエーションがあるので、好みの配色なのが買えて、千円チョイ。
料理の下ごしらえに使ったあとは、まめに水気をとって、クロムが溶けださない(さびさせない)ように注意しましょう。
キッチンバサミは、ステンレス鋼刃でもさびる
「スレンレスはさびない」と かんちがいしている人がいます。さびは、金属の酸化です。高校の化学で習いました。
ステンレスは、鉄 Fe と クロム Crの合金です。合金の中ではさびやすい方です。しかし、すぐにクロムの酸化皮膜が金属の表面にできて保護するので、さびが進んでボロボロになりにくいんです。
Amazonのキッチンバサミのレビューをみていると、「サビがでてダメだ」なんて書き込みをしている人がいます。ステンレスの酸化皮膜を破壊するような使い方をしているんです。自分の無知を恥じなさい。
塩水やハイターにつけるなどの誤った洗い方は重金属 クロムが溶け出します。
(ステンレス表層のクロム被膜や3価クロムには鉱毒がないと言われていますが)金属アレルギー(接触性皮膚炎)の原因金属の1つなので注意しましょう。
ステンレスは柔らかいので刃物に向きません。刃物用のステンレス鋼がハサミに使われています。
パッケージや封を切るハサミと食品を切るハサミを分ける(衛生面を配慮)
2019年以降、武漢肺炎ウイルスのパンデミックにより衛生面を重視する時代の流れになってきました。
パッケージを切るのは、専用のクラフト用のハサミで行い、食品は調理用ハサミを使うようにしましょう。
-
-
じょうぶな 工作ハサミ エンジニア MP PH-56を買って使っているので紹介。手芸、パッケージの開封に使えるハサミ
仕事の関係もあって、ハサミはいろいろ使います。今回は、工作バサミの【エンジニア 鉄腕ハサミ MP PH-56Y】を買って愛用しているので紹介します。 エンジニアは、大阪の手用工具メーカーです。 「ネジ ...
入れ歯や歯科矯正中の患者にキッチンバサミの使い方を説明する
要点は、
- 総義歯には、前歯でかみ切る性能はない
- 1cm 大きさにハサミで切りきざむ
- 家族がキッチンバサミを用意してやる
- 食事の新スタイル「右手にハサミ、左手にトング」
総義歯は前歯でかめない
保険で作れる可撤義歯(取り外しのできる入れ歯)は、前歯で噛みちぎることができません。
とくに総入れ歯(総義歯)は、どて(顎堤)が良ければ、前歯でかみ切ること(前方位で咬合接触を付与)ができます。でも、今は顎堤の良い義歯患者はほとんどいない。
居酒屋、ファミレス、回転寿司に年寄りを連れて外食するなら調理バサミを忘れずに!
厚生年金をもらっている(老いた)親を外食に連れていき、支払いは親に払わせていますよね。
「ひぃ爺ちゃん/婆ちゃんが、入れ歯がかめないから回転寿司に一緒に行きたがらない。かめる入れ歯を作って!」と孫が連れてくるケースは良くあります。
「新義歯を作るのに3ヶ月はかかりますから、とりあえず、キッチンバサミを使って小さく切って食べさせてあげてください」と付き添いの家族に指導しています。
銃刀法にひっかかる問題
銃刀法(銃砲刀剣類所持等取締法)では、「刃体の長さ6センチ以下の刃物」であれば銃刀法に抵触しません。
6センチを超えるハサミであっても、持ちあるく正当な理由とケースにいれておけば警察側の判断で許してもらえるようです。
- うどんやラーメンを食べに行く
- 前歯が仮歯や義歯である
- 回転寿司でイカやタコを切り刻むのにハサミを使う
- 介護用スプーンや箸と一緒に 料理バサミを入れておく
など条件がそろっていれば、咎められることはないです。
まとめ
超高齢化社会の日本において、「フォークとナイフで切り分けて箸で食べる」形から、「トングと調理バサミで切り分けて、箸で食べる」文化も広めていきたいです。
そのためにも、料理バサミが進化をし続けることに期待しています。
「キッチンバサミ」に関する情報からでも、ネット上にあふれている嘘の情報を見抜く力を身につける”小中学校の勉強”が大切なことの例としても記事にできたのはラッキーでした。
順次、買って良かった調理バサミを追加していくページです。