みなさん、干し柿作っていますか? もちろん、我が家も作っています。
10月上旬に、我が家の庭に植えている渋柿(西条柿)の収穫をします。
- 2018年:5個
- 2019年:25個収穫
- 2020年:台風10号のため全部落ちた Orz…
- 2021年:27個
- 2022年:虫食いと台風14号のため 全部落ちた
- 2023年:猛暑のため 一部枯れて 実が1個も付かなかった
ここ3年は、実が大きくなりかけたタイミングで台風が来て、風で実が落ちてしまうようになりました。
数個しか収穫できない年が多いです。
カビけたり、腐ったり、ウジ虫がわいたりと、食べられずに捨ててしまうんです。
地球温暖化のため、柿の収穫時期と干し柿を作るのに適した外気温になる季節がずれてきています。
そこで、
干し柿の作り方、カビ対策など 干し柿づくりのノウハウをまとめ
ました。
干し柿 って何?
柿を乾燥させてドライフルーツ化したものです。
- 渋柿には、渋の成分「タンニン」があって、そのままではシブくて食べられない
- 柿を干して乾燥させ、実の中のタンニンを凝縮して顆粒状にすることで渋さを感じさせなくする
- タンニンには、抗菌効果もあるため、カビが生えにくい
- 柿の実が乾燥するにつれて、糖度があがり腐りにくくなる
といった性質を利用したものです。
干し柿用の柿は何が良いの?
西日本で、渋柿といえば、
- 西条柿(さいじょうがき):鳥取・広島など中国地方
- 愛宕柿(あたごがき):愛媛など四国・瀬戸内・中国地方
の2種類があります。
歴史は古く弥生時代には食べられていたとか、戦国時代(16世紀半ば)に、保存食「干し柿」は、武将の間で珍重された逸話があります。
大きい柿は、干して乾燥させるのに時間と手間がかかるので、一般家庭で手軽に干し柿作りを楽しむには難しいです。
渋柿は、シブ抜きをすればすぐに食べられる
二酸化炭素のガス(ドライアイス)を使うと、シブ(タンニン)を凝縮させることができます。渋抜きです。
乾燥するときに、糖分の一部が発酵、アルコールからアルデヒドに変化することで、タンニンと反応して不溶性に変化して凝縮することで渋を感じなくなります。
西条柿は非常に甘い柿で、ゼリー状のプルンとした食感から、歯のない年寄りに人気があります。
二酸化炭素(炭酸ガス)でシブを抜くと2,3日で溶けるので、早めに食べるようにしましょう。
ジュクシ(熟し柿)になるまで待って、食べる人もいます。
他人が作った干し柿は食べられない
患者が持ってくるもので、自家製の干し柿ほど迷惑なモノはありません。
なぜなら、干し柿の製造過程を考えると、衛生的に良くないものだからです。
自分で作った干し柿以外、安心して食べられません。
以上を踏まえて、
干し柿を作る手順
必要なモノ
- 渋柿(干し柿用、西条柿)
- 干し柿用の紐
- 重さに耐えられる洗濯もの干し台
- 安いブランデーか無水エタノール(日本薬局方)
- 100均で売っている スプレー瓶
- マイクロバーナーなど
干し柿を用意する
干し柿に適した渋柿のサイズは?
柿のサイズは、小さいほど乾燥しやすいため、干し柿の歩留まり(成功率)が高くなります。
柿のサイズが大きいほど糖度があがるので、うまくできれば、最高級の干し柿になります。
我が家の渋柿(西条柿)は、120〜200gの重さになります。
大きすぎるものは乾燥できずに腐敗してしまうので、二酸化炭素ガスで渋を抜いて食べるようにします。
愛宕柿は、200〜300gと大きいので、干し柿にするのは非常に難しいとされています。
渋柿の収穫時期の目安
- 寒暖の差が激しくなる10月中旬以降
- 温暖化で、柿の熟れる時期が早まっている
- 特大台風が接近するなら、風で実が落ちる前に収穫
うれすぎてブヨブヨになってしまう「づくし、じゅくし(熟柿)」になると、皮がむけないので、青い柿が一部オレンジになったくらいで収穫します。
渋柿用のつるし紐にひっかけられるように、ヘタにある枝をT字型に残して切ります。
毎年10月下旬頃に、スーパーで「干し柿セット」が売られているので、庭に渋柿の木がない家庭では、それを買います。
渋柿の下ごしらえ
- ヘタの枝の長いものは枝切りバサミで切りそろえる
- ヘタが長いので、ハサミで切りそろえる
- 水道水できれいに洗う
- 大きめのボウルに水を溜めて、水道水につけて汚れをふやかしてから
- 歯ブラシを使って、ヘタの枝を折らないように気を付けて洗う
- ヘタや柿の表面の凹みに蜘蛛の糸や虫がついていることも多いのでよく洗う
- ザルにおいて水気を切ったあと、キッチンタオルや清潔な(高温のお湯で消毒し乾燥した)布巾で余分な水をとる
柿の皮をむく
- よく切れるピーラーで、ある程度の皮をむいいて
- ヘタに近いところは、包丁(ペディナイフ)で皮をむく
の二段階でやっていきます。
ピーラー担当とナイフで皮むきの2人でやると早くできます。
渋柿の皮は硬いので、ピーラーでむくにしても力が必要です。うっかり、「余し」で滑らせて、持っている手の指を切らないように注意してください。
西条柿は、実に縦の溝があります。溝の皮を気を付けてむいてください。
ブランデーにつけて消毒する
干し柿作りの失敗の原因は、カビ(真菌類)による腐敗です。
カビを防ぐために、皮をむいた柿に表面処理をします。その方法は、
- 熱湯をかける
- 鍋で、5秒間湯がく
- 水飴をお湯に溶いた鍋で湯がく
- 焼酎に30秒つける
- ブランデーにつける
- 消毒用アルコール(70%エタノール水溶液)につける
などがあります。
我が家では、ガス給湯器で熱湯をかけて、ヘタの部分を熱湯消毒し、無水エタノールを添加したブランデーに20秒浸漬して、扇風機で急速乾燥です。
その中でも、エタノールが40%弱のブランデーに浸ける方法が良いようです。
NHKの番組「やまと尼寺 精進日記」が毎月最終日曜日の午後6時からやっています。その中で、住職が、「いろいろ試したけど、ブランデーが良い」と言ってたので、みんなブランデーに浸けるようになったと思います。
果樹酒用ブランデーは、紙パックで売られています。干し柿を百個単位で大規模に作る家庭では、紙パック入りの方がお得でしょう。
- 枝の部分までしっかりとつけ込む
- 10〜30秒つけ込む(薬液の浸透は、30秒以上が基本なので)
我が家は、私も妻も晩酌をする習慣がない(ソバーキュリアス)ので、アルコール飲料を飲むことがありません。料理用として、清酒、みりん、そして干し柿だけのために、ブランデーの1番安いのを買っています。
ブランデーは余ったら、お菓子などを作る時の香料として使えます。
酒税法が改定される度に、エタノールの価格が高くなっています。
カビの発生を抑える効果よりも、雑菌による腐敗を防ぐには、エタノールによる消毒が有効です。
ブランデーを使う前までは、無水エタノールを使っていました。
消毒用アルコールで安いものは、飲めないように、メタノールや、イソプロピノールなどを混ぜてあったり、苦みのあるアルコール系添加剤をいれてありますから、使えません。
ブランデーに浸漬する時間は、20秒以上にしています。
渋柿を干す
2本ヨリの干し柿用のヒモはいろいろあります。「パールロープ」の細いヤツが農協の売店で売られています。
柿がぶら下がっても重ならないように、適度な間隔で、渋柿をつけていきます。
1m弱のヒモに、7〜8個の柿をつけます。
柿をたくさんつけすぎると、重くなります。柿をつけた縄を、家の中で移動させたり、窓際に置いたり、外に持って出るなど、取り扱いが難しくなります。
ブランデーにつけたばかりで、ヒモに付けるので、ブランデーがしたたります。
下に新聞紙などを置いて、扇風機で軽く風をあてながら、一晩室内で乾かしましょう。
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2021年分です。
我が家のように、小さい渋柿の木1本であれば収穫量も20個ほどなので、ハンガーに干して、USB扇風機で風を当てるだけでも作れます。
高濃度のアルコールにつけることで、表面の水分を早く乾かして、カビの発生を押さえる効果があります。
干し柿は、室内で干すだけで良いのか? 外に出して日に当てるのが良いのか?
直射日光に当てる意味は、
- 表面の殺菌、カビの防止
- 乾燥させ糖度を上げる
- 紫外線や熱刺激による酵素の活性化で糖質変化と熟成
です。
雨の日は、家の中にいれて、晴れたら外にだして、日に当てるのが良いに決まっています。
400年前から、家の軒に干して作っているものですからね。
紫外線灯は、前々から実験しているけど、目立った効果がかんじられません。
サンルームは、干し柿製造に最適
ベランダにガラス温室(サンルーム)がある家では、大規模に干し柿を作れます。
皮をむいて、アルコールに浸けて、サンルームに干すだけです。
完成するまでの1ヶ月、サンルームの換気だけ注意していればいいので、手間がまったくかからないメリットがあります。(もみもみ するのは手間ですが)
島根の日本海岸側山間部の村には、海から吹く北風を利用した干し柿用の乾燥家屋が点在して、シーズン中は柿が大量に干されている光景があります。
農協に卸す、通販で売るなどの商業ベースでやっている家もあります。
乾燥室で乾燥させた後、粉を吹いたようにみせるために、ブドウ糖をまぶして出荷します。
中に、栗餡をいれて丸めると超高級和菓子になります。
我が家も、新築当初はベランダの一角をサンルーム化する予定でした。しかし、台風の強風にさらされるため断念しました。
いろいろ研究した結果、
- 毎日、直射日光に当てなくても
- 室内で単純に乾かしても
干し柿になることが分かりました。
なので、外に持って出て干すことを、積極的にしなくなりました。
台風の風害で実が落ちて、何十個も収穫できないこともあります。
十個くらいなら、もう家で洗濯物と同じ、室内干しでいけます。
サーキュレータや扇風機を使って最初の数日は風をあててやれば表面のカビの発生を少なくすることができます。
極端な話、パソコンの排気熱でも干し柿が作れます。
この室内でパソコンの排気熱で乾かす方法なら、ブランデーに1分程度浸した柿でカビが発生しません。
ただし、乾燥の速度が早いため、表面がオレンジ色のままで、黒い干し柿にならない問題があります。
表面が完全に乾いたら、指で柿をもむ
(イソジンスクラブで)綺麗に洗って乾かした指でつまんで、表面に触っても、指にひっつかなくなったら、第一次関門突破です。
ゆっくりと指でつまんで、熟した中身をもんでいきます。
プニプニと、やぶれて中の汁が垂れない程度にもみます。
(2021年分)7日目、表面が乾いてべたつかなくなったら、表面の乾燥してできた皮を破らないように、中をグチュグチュもみました。2日に1度程度 もみます。
9日経過ですが、まだ中が乾いていません。シブはなくなっていて、糖度はグーンとあがってきています。
外に干していると アシナガバチがやってきて食って穴をあけたり、鳥が学習すると食い散らかすことになるので室内で風を当てて乾かしましょう。
この時、カビが表面にできていたら、手の先から他の柿に移ったり、中の柔らかいジュクシ部分に菌糸がひろがるので、よく観察しながらやってください。カビがひどい場合は、容赦なく捨てましょう。
干し柿のカビをどうするか?
ベランダに干していた柿には、白カビが発生しました。
2019年は、台風19号、20号と連続したのと秋雨前線の影響で、雨天が多く気温も(10月にしては)異常に高かったため、カビの発生を防ぐことができませんでした。
カビの発生を抑えるには、カビの発生条件にならないようにするしかありません。
- カビの胞子の付着 → カビの発生した干し柿を取り除く
- カビの胞子の発芽 → 水がつかないように、雨に当てない、霧に当てない、直射日光に当てる
- カビの胞子の菌糸の成長 → 広がらないように除去
干し柿になって、柿の実の水分が減り糖度が高くなると、カビの発生や広がりが止まります。
8日目です。
大雨のため、室内の湿度もあがります。エアコンで除湿しつつ、パソコンの排気熱と風で乾燥を続けます。
これくらい、シワシワになってくると、白カビも全体に一気に広がることはありません。まだまだ柔らかいですが、柿シブは抜けているので、食べることができます。
この状態でも、かなり甘いんですよ。
最初にブランデーにつけることで、青カビ、黒カビは防げる
ブランデーにしてから、ブランデーに含まれるアルコール以外の成分のおかげか? いままで発生していた、青カビや黒カビはでなくなりました。
しかし、白カビだけは生えてしまいます。
干し柿は乾燥と熟成が進むと、表面に糖分が染み出て結晶化し白く粉を吹いた(柿霜)ようになります。今回は、1週間目の柔らかいジュクジュクの状態ですから、糖分の結晶ではないはずです。
顕微鏡でみると、菌糸がばっちり観察できたので、カビと断定しました。
今時、干し柿の存在すら知らない子供も増えたし、一部の愛好家だけが食べるものになりましたから。
アルコールをスプレーする
無水エタノールとブランデーを100均のスプレー瓶にいれます。
「婆ちゃんの生活の知恵」とか、昔から言われているのは、干し柿のカビに対して、焼酎を噴霧(スプレー)する方法です。
カビの広がりを抑える効果は、期待できるでしょうが…。カビ、真菌の性質を考えても、効果的じゃないです。
白カビが発生するたびに、ブランデーや無水エタノールをスプレーでかけてみました。効果はありません。
エタノールは、干し柿をプニプニと揉む前に、手の消毒(手洗い後の乾燥が主な目的)として使います。
カビの部分を除去する
カビが発生したところを、切り取ります。えぐり取るのが正しいかな?
肉芽をつまみ採る「鋭匙ピンセット」を使うと効率よくカビの部分を取り除けます。
カビをバーナーで炙る(火炎焼灼)
カビは、熱に弱いです。80度で30秒ほどで、カビのほとんどが不活性化(死ぬ)します。
部分的にカビが発生したところは、広がらないように、火であぶって焼き払います。これを火炎焼灼と言います。
バーナーは1000度くらいあるので、うまく操作してください。黒焦げになります。
ヒダを伸ばすように広げてから、カビの部分を露出させて、細長い小さい火炎で焼きます。
電気メス(高周波メス)を未だに使われているセンセなら、電気メスでも構いません。アース板にのせて、切開モードでピンポイントで切り取るか、広い面積を焼くときは、止血モードでやると良いでしょう。
もちろん、炭酸ガスレーザをお持ちでしたら、もっとスマートに、カビの部分だけを綺麗に蒸散できます。
10日くらいで食べられるようになる
早ければ、一週間くらいで、渋がぬけて、柔らかい干し柿として食べられるようになります。
自分の好みの固さになるように、乾燥を調整します。
汁が滲むような柔らかい状態の生乾きな干し柿は、ねっとりと甘く美味しいものです。
しかし、冷蔵庫で保管しないと、すぐにカビけてしまいます。日持ちがしないんです。
乾燥が進むにつれ、保存性が良くなります。
二週間以上経過してくると、干し柿!な色と形になってきます。200g弱あった重さも、50g以下と1/4以下になってきます。
1ヶ月程度で完全に乾燥して、カチカチになったら、カビもこなくなります。
砂糖は一切使っていないのに、砂糖漬けフルーツ?って思えるくらいの甘さになります。
今は、干し柿で前歯を折る人は減りました。
凍らせた板チョコをかじって歯を折るとか、そんなかんじです。
まとめ
干し柿を作るノウハウをメモしていたモノを、ブログ記事に仕上げました。
大学で習った、微生物学、細菌学の知識が、こういう干し柿一つ作るにしても役立ちます。
自分で作ったものなら、自分の手垢と我が家のホコリが積もったものなので、その不衛生な点も我慢できます。
10月下旬のハロウィンの頃、渋柿と吊し紐がついた「干し柿自作セット」がスーパーなどで売られています。
干し柿が好きな人は、自分のために、自分で作りましょう。
自分の家に住んでいる人は、ベランダに耐風害のサンルームの設置をすると、いろいろと楽しめます。