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電気の交流(AC)と直流(DC)を解説
しました。
電気については、中学校の理科で習います。忘れた人のために解説します。
直流(AC)、交流(DC) って何?
電気には、
- 交流:壁にあるコンセントの電気
- 直流:電池の電気
の2つがあります。
電気には、
- 電圧(V、ボルト)
- 電流(A、アンペア)
- 電力(W、ワット)
があって、
- 電力(P) = 電流(I)× 電圧(E)× 時間(H)
- 単位時間の場合は、時間を省略
となります。
- P:Power(電力)
- I:Intensity of electric current(電流)
- E:Electromotive force(電圧)
以下、交流(AC)と直流(DC)のメリットやデメリットを解説します。
交流(AC)
交流は、壁のコンセントにきている電気です。100Vなので、手で触ると感電してヤケドをしたり、心臓が止まったりするので危険です。
電気の流れが、行ったり来たり(プラス マイナスが交互に行き来)している電気のことを「交流」と言います。
交流は、英語のAlternating Currentを略して、ACと標記します。
自転車の直流 交流発電機をダイナモっていいます。
交流モータを回すと交流が発電できて、直流モータを回すと直流を発電できる。
家の壁にあるコンセントに来ている電気が、AC(交流)の100Vです。
- 電柱には、6000Vの交流
- 送電線には、50万V、22万Vの交流
発電所から家にくるまでに、段階的に電圧を下げています。
周波数
日本では、
- 東日本 → 50Hz
- 西日本 → 60Hz
の2種類の交流電気が国を二分する形で使われています。
昔は、それぞれに対応した周波数の家電を使わないと、うまく動きませんでした。
明治時代、発電所の発電機を輸入した時に、ドイツ(50Hz / 230V)の発電機を東京に、アメリカ(60Hz / 115V)の発電機を大阪に置いたためです。
交流の実効値
アナログテスターの交流電圧計の目盛りは、交流の平均値を実効値に換算したものが使われていました。今のDMMも演算した数値を表示します。
交流は電圧が一定ではなく、直流のような実態を伴う数値として「実効値」を使います。
コンセントに来ている交流は、実効値が約100Vとして標記されます。実際の最大・最小電圧(ピーク電圧)は、√2倍の ±141.4V(実測値は、実効値で100〜105V前後)になります。
- 平均値 = 2/π × ピーク値
- 実効値 = ピーク値/√2:(二乗平均平方根)
- 実効値 = π/2√2 × 平均値 ≒ 1.11 × 平均値
交流の電力の計算は、この実効値を考慮に入れないと誤差が大きくなります。
交流の電流と消費電力の計算については、トランジスタ技術 2022年4月号 電子工作回路と数学の世界 の記事を参考にしてください。
AC(交流)の良いところ
交流は、トランスのつなぎ方で、電圧を上げたり下げたり簡単にできるのが特長です。
私の手持ちのトランスの一つで、
銅線を鉄の芯に巻いて作るので、大きくて重いです。
- トランスを使って簡単に電圧を変えること(変圧)ができるので
- 電圧を高くして電流を小さくすることで、遠くまで電気を運べる
AC(交流)の悪いところ
- 電子回路で使うには直流(DC)に変換しないと使えない。
- 絶縁が直流より手間がかかる
- リアクタンス(誘導抵抗)、表皮効果がある
リアクタンス(誘導抵抗)→ コイルやコンデンサーを通る時の抵抗
表皮効果 → 交流の周波数が高いと銅線の表面に電流が集中して流れにくくなる
AC(交流)の向きはあるの?
交流は、電気の向きがいつも入れ替わっていますが、一応、プラスとマイナスの向きがあります。
コンセントの穴の大きい方が、マイナス(接地、グランド、アース)になります。
家電製品の中には、プラグのサイズが微妙に大小になっていて、コンセントに逆に入らないものもあると聞いた事があります。私は、そういう家電に出会っていません。
もし、コンセントの向きで音が変わるオーディオ機器があるとすれば、電源の設計ミスです。
AC(交流)の配線ケーブルは、なぜ赤白黒の三色の3本なの?
家の天井や壁の中に引いてある電気の配線は、「単相3線式」規格です。
- 赤:電圧線
- 白:中性線
- 黒:電圧線
の線が束ねて1本の電線になっています。
一般の家庭の壁のスイッチに来ているのは、白と黒(赤)の線の2本できていて、100Vです。
業務用のエアコンや工作機械など強力なモーター(大量の電気を食う)、電磁調理器(IHコンロ)を使うものには、赤と黒の両方をつないで200Vとして使います。
直流(DC)
電池の電気は、直流です。電圧の変化はないのが特徴です。
太陽電池パネルや電子回路で使われる電流も直流です。スマホやパソコンのデジタル電子回路も、直流で動いています。
直流は、Direct Currentを略してDCと言います。
直流(DC)の良いところ
- 電流の流れる方向がきまっているので、いろいろとわかりやすい
- エジソンが電球を発明した頃は、直流を発電所からひいていた
- 電子回路は直流を使う
- リアクタンス(誘導抵抗)や表皮効果がない
直流(DC)の悪いところ
- 電圧を上げ下げするのが難しい
- 電圧を変えるには、「発振回路で交流 → トランスで変圧 → 交流を直流に戻す」手間がかかる
- 離れた発電所から電気を運ぶのに直流では効率が悪い
- 大電流の直流は遮断すること(スイッチ)が難しい → この性質を利用するのがアーク溶接
直流の配線のルール
特に決まりはないようです。電子工作机には、好みの色を用意します。
- 黒白なら、黒をグランド(0V)
- 赤白なら、白がグランド(0V)
- 信号線は、青、黄色、灰色など
基板の配線をする時、間違えないように明記したメモをつけておきましょう。
脈流
交流と直流が混じった電流です。 Pulsating currentと英語では言います。
交流を直流に変換する途中でできる「脈流」は、”綺麗なまっすぐの”直流にするために、
- チョークコイル
- コンデンサ(キャパシタ)
で構成された「平滑回路」「LC回路」を通します。
この平滑回路がダメだと、交流成分が漏れ出してしまいます。その漏れ出た交流成分のことを「ripple」と言います。
モバブやACアダプターのUSBは、5Vの変化をしない(グラフは横に1本の線になる)電圧が出ます。しかし、粗悪なDC/DCコンバータを使ったモバブやACアダプターでは、この脈流が出ています。
この脈流が、充電するスマホやタブレットなどガジェットの故障の原因の1つになっています。
ACアダプター、AC DCコンバーター って なに?
ACアダプターは、コンセントから直流を取り出して、ノートパソコン、スマホやガジェット、家電を動かすために使います。
直流を出す口、コネクタの種類で
- DC電源プラグ
- USB端子
の2種類があります。
実物の例はこんなかんじのものです。
呼び名もいろいろあります。
- ACアダプター:DCプラグとUSBタイプの2種類
- 電源アダプター
- AC DCコンバーター
- AC DCアダプター
- 外部電源、別電源
- AC電源、DC電源
- AC USBアダプター(USB急速充電器)
などと、明確な定義の名称がないため混乱しています。
ACコンセントから直接つないで使える「電源を内蔵している家電」と違って、
アダプターの良い点
- 電源部を別に置くことで、本体が小さくできる
- 熱を発生する電源が別なので、本体の熱対策をしなくて済むので安く小さく作れる
- 電源を別にできるので、電源のノイズから遠ざけることができる
などの利点があります。
ACアダプターの欠点
- 電源が別なので、一緒に持ち歩くのが面倒
- DCの電圧が違う、DCプラグだったりUSBだったりと、機種によって違うので種類が増え続ける
などがあります。
ACアダプターは、主にスイッチング電源です。(トランス式もあります。)
スイッチング電源とトランス電源 の違いは?
- スイッチング電源は、回路が複雑だけど小さくできて効率が良い
- スイッチング電源は、銅をたくさん使った高いトランスを使わないだけ安く、軽く作れる
- スイッチング電源は、発振周波数が高いので平滑回路で使うキャパシタ(コンデンサー)の容量が小さくできるので小型化できる
- スイッチング電源は、ノイズが出やすい
- トランス電源もスイッチング電源もトランスは使う。
- トランス電源は、AC電源の50Hz、(60Hz)の周波数で必要な電圧まで下げてから整流する
- トランス電源はトランスが大きい、スイッチング電源はトランスが小さいので電源の大きさが小さくできる
スイッチング電源について もう少し詳しく
- スイッチング電源は、スイッチングレギュレータ回路になっている
- スイッチング電源は、AC電源の周波数をさらに上げて、高周波トランス(等価回路)で電圧を決める
- 電圧と電流の制御(レギュレーター回路)や安全保護回路が一括になったICチップ
- 高周波発振回路にMOSFETのパワートランジスタを使うが、GaN(窒化ガリウム)で注目を浴びている
レギュレータ
regulator 、電圧や電流の制限回路をもつ部品のこと。使う側の抵抗(負荷)が変わっても、決められた電圧を保つように、自動で調整したり、過大な電流が流れた時に回路を保護したりする回路をレギュレータ回路という。
レギュレータは、ICの黒い樹脂の塊の中に、ひとまとめになっている部品である。
GaN(窒化ガリウム)、SiC(炭化ケイ素)のパワートランジスター ってなに?
2010年代、スイッチングレギュレータ回路(電源回路)に不可欠な”パワートランジスター”にブレークスルーが起きました。それが、炭化ケイ素、窒化ガリウムを使ったパワー半導体の登場です。
ON抵抗がないため損失(発熱)が小さく、さらに高い周波数の(効率の良い)発振回路が作れるようになりました。
MOSFET
モス エフイーティ。電界効果型トランジスターで、集積回路などで広く使われているトランジスター(半導体素子)。発振回路に必要な半導体素子である。
電気メッキは、直流 交流ですか?
メッキは、負極に金属イオンが付着してできる化学現象です。なので、正負がかわる交流では、メッキができません。
直流です。電流は弱くして時間をかけるとメッキ面がきれいになるので、調整をしてください。
DC/DCコンバーター ってなに?
DC/DCコンバーターとは、直流を直流に変換する装置、回路のことです。
- 電圧を上げるDC-DCコンバータ:昇圧コンバータ、ステップアップコンバータ、ブーストコンバータ
- 電圧を下げるDC-DCコンバータ:降圧コンバータ、ステップダウンコンバータ、バックコンバータ
- 電圧の上げ下げDC-DCコンバータ:昇降圧コンバータ、バック ブースト コンバータ
- マイナス電圧のDC-DCコンバータ:負電圧コンバータ、反転回路
の4種類があります。
ここ5年、GaN、SiCによるパワートランジスタの出現で、変換効率が劇的に向上しています。
詳しくは、別ページで解説とまとめをします。
まとめ
この記事は、レビュー記事から専門用語についての解説を参照するために書かれています。主に「電源」に関するまとめ記事です。
各項目には、アンカーリンクをつけてありますから、記事から参照する形で文中リンクを貼ります。
順次、追加、修正をしていきます。
UPSのAC 100V 出力波形(PC接続時)を貼ること