無停電電源装置の用語と選び方について、まとめます。
後半に、私が厳選した おすすめのUPSを紹介しています。
UPS って何?
停電になったときに、バッテリーから電気を流し続ける装置です。動作中に電源が途絶えて止まると困る機器(パソコンやサーバー)を守るためにつけるものです。
UPSは、Uninterruptible Power Supply の略です。直訳すると、「中断しない電源供給」です。日本語では、「無停電電源装置」と呼びます。
昔、パソコンに使われていたHDD(ハードディスクトライブ)は、動作中に電源が落ちるとデータが壊れて、読めなくなることが良くありました。さらに、HDD自体が壊れて使えなくなることもありました。だから、仕事で使うパソコンには、必ず無停電電源装置を付けるようにしていました。(ups)
UPSの種類(電源の切り替え方式の違い)
停電が起きて100Vの交流が止まった時に、内蔵バッテリーに切り替えて、電流を流し続ける時の電源の切り替え方法で、3つに分けられます。
常時商用給電方式
2万円以下の無停電電源装置は、この常時商用給電式です。
通常は、コンセントからの100Vをそのまま直結で出力しています。
停電になったときは、停電になったことを回路で検知して、内蔵バッテリーからの電気の供給切り替えをします。機械的なリレーなのでカチッと切り換わります。この切り替えの時間が、どうしても長くなります。そのため、瞬間的に通電しない「瞬間停電」を起こしてします。
「瞬間停電」を防げない仕組みなので、パソコンの電源によっては、瞬間停電に耐えられず電源が落ちたり不安定になることがあります。(shoyo)
常時インバータ方式
絶対に止まってはいけないサーバーなどにつながれる業務用の無停電電源装置は、この常時インバーター式を採用しています。
安定した電流と電圧を供給できる理想的な無停電電源装置です。
100Vの交流を直流に変換して、バッテリーの充電、バッテリーからの出力を直流/交流変換回路を通して出力しているので、停電や電圧降下が起きても、出力電圧や電流にまったく影響がないので瞬間停電を起こしません。
交流回路が直結してないので、雷による突発電流(サージ電流)も通さない構造になっています。
しかし、交流を直流に変換して、さらに直流から交流に変換する(DC/ACコンバーター、インバーター回路)という2回の変換回路を通るので消費電力が大きくなります。
回路からの熱もでるのでエネルギー損失が大きく、UPS本体が大きく重くなってしまう欠点があります。
一般家庭では、本体が大きくて場所を取るし、ファンの音がうるさくて、電気も食うので使われません。それに、非常に高価です。(inverter)
ラインインタラクティブ方式
常時商用給電方式と常時インバーター方式の欠点を補うようなものが、ラインインタラクティブ式です。
通常は、コンセントから供給される100Vの電圧をそのまま通します。
電圧降下を回路で検知すると、瞬時に内蔵蓄電池からの直流を交流に変換して混ぜて100Vを維持するように供給します。(自動電圧調整機能:AVR機能)
停電したときは、バッテリーからの交流供給が100%になります。
構造上、完全に電流が途絶える瞬間停電をなくすことができません。常時商用給電方式よりは瞬間停電が短くなるように工夫されています。価格も3万円前後から買えるようになってきています。(line)
出力が直流か交流か?
UPSには、
- バッテリーの直流をそのまま出力するタイプ
- バッテリーの直流を交流に変換して出力するタイプ
があります。
通常は、供給される交流と同じにする、交流出力方式です。
それを、CVCF(Constant Voltage Constant Frequency)というカタログもあります。
出力(つなげられる最大ワット数)
出力容量
UPSにつなげられる機器の最大消費電力(W、VA)をチェックしましょう。
もっとも売れている出力容量は、500VA / 350W タイプです。
交流は、電圧が常に変化しているために、
- 電圧と電流の変化を測って積分した電力(有効電力)→ W
- 見かけ上の電力(皮相電力)→ VA
があります。
交流は、常に電圧と電流の向きが変化しているので、実際の消費電力を測ることが難しく、短い時間で電流と電圧を測ってそれらを積分して、実際の電力(有効電力)を計算します。
つなぐ機器の VA、W の計算
VA(皮相電力)=見かけ上の電圧 V × 電流 A
有効電力W = VA(皮相電力) × 力率(0.6〜1.0)
力率:フィラメントの電球=1.0、高効率のATX電源=1.0、安物のATX電源=0.7
- パソコン本体:100V / 3A 〜 300VA → 安物のスイッチング電源なら ×約0.7 =約210W
- ディスプレイ:100W / 0.5A 〜 50VA → 安物のスイッチング電源なら ×約0.7=約35W
として足し算して 合計345Wなので、500VA / 350W仕様のUPSでOKです。
計算が面倒なので、エコワット/ワットモニターのような有効消費電力が表示されるものを使って実際に測って決めましょう。
消費電力を調べるワットモニターや電流を測るDMMを持っている人は、バックアップをしたいパソコンとディスプレイ、周辺機器一式のコンセントをつないで、実際の消費電力(有効電力 W)を調べます。
PS4 Proユーザも、UPSはこの500VA / 300Wタイプをテレビとセットでつなぎましょう。
i7-7700Kの自作パソコンの場合、アイドリングで70W〜です。ディスプレイが15〜20Wくらい。動画の圧縮をグラフィックカード支援でやっているときは200Wを超えます。
PowerMac G5の800VA(550W)のような消費電力の大きなパソコンに、500VAのUPSをつなぐと容量オーバーで警告のビープ音が鳴ります。
この対応できる最大消費電力が大きければ大きいほど、内蔵されている蓄電池のサイズが大きく、数も増えるので、UPSは大きく重くなって、価格も高くなります。
だから、UPSは、500VA / 350Wのものが、種類も多く、コスパも良いのでおすすめです。
出力コンセントの数
無停電電源になるコンセントの数をチェックしましょう。
APCというメーカのUPSの背面です。
「BATTERY BACKUP」と黄色のワクで囲まれたコンセントが3つついています。この3つは、停電になっても、交流を出力できるコンセントです。
550VA / 340Wなら、3つのコンセントにつないだパソコンやディスプレイの合計が、340W以下になるようにします。
「SURGE ONLY」というワクで囲まれたコンセントは、3つ付いていますが、これは単純に、ACタップと同じで、停電になったら、そのまま停電してしまうコンセントです。それでも、雷による過大電流(サージ電流)から守るコンセントになっています。
我が家の敷地内にある電信柱に落雷したときは、このサージカット機能のおかげで、パソコンなどの機材の全滅は免れました。
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出力交流波形
UPSの鉛蓄電池に蓄えられている電気は、12Vの直流ででてきます。それを元の100Vの50Hz / 60Hzの周波数の交流に戻す「DC/ACコンバータ回路」がついています。
ところが、安物の直流から交流変換のコンバーター(インバーター)回路は、正弦波にできずに、矩形波として出力するものがあります。
矩形波と正弦波
正弦波の例をあげます。
これは、波形発生装置で、5V 60Hzの正弦波をアナログオシロスコープで表示してみました。
UPSのバックアップ用コンセントからでてくる電圧は、縦軸のマス目一つが50Vで、5つのマス目を行き来する140V(100V)の正弦波になります。
100X(1/100)の高圧プローブのテストもかねて、ACコンセントの波形を見ました。
電圧は、100分の1なので1.50Vで、150Vです。誤差もあるので、これくらいです。
次に、矩形波の例をあげます。矩形波は、方形波とも言います。
60Hzの矩形波はちらついて、デジカメで綺麗に撮れないので、100倍の6KHzで表示してみました。
矩形波は、単純に+と−の電圧の電気を流しているだけです。滑らかにしていないので、つないだ先の機器の電源が安価なスイッチング電源の時、整流(直流に変換)できません。
トラブルになりますから、UPSは正弦波を出力できるものを選びましょう。
OMRON BW55Tの停電時のAC出力の波形をオシロで見ました。
きれいな正弦波ではないものの、矩形波での出力ではありません。これくらいなら、パソコンの電源として安心して使えます。
入力電源と周波数
日本のコンセントの電源は、100Vの交流です。電圧は、100〜110Vで、東日本では100V、西日本はやや高めの105〜110Vです。
交流の周波数は、東日本が 50Hz、西日本が60Hzです。
海外の電化製品をそのまま使う人は、47Hzや63Hzなどのものが必要になることがあります。
バッテリー性能
UPSには、密閉型の鉛蓄電池が入っています。その蓄電池が満充電になるまでの時間が長いものは、断続的に停電が起きたときに対応できないことがあります。
最近のUPSのバッテリーは、従来の12V8Ahの汎用タイプではなく、専用のリチウムイオンバッテリーを搭載するようになってきています。
メーカーの直販で、バッテリーだけ交換できるものがあります。
何時間持つのか?
内蔵するバッテリーの数、無停電電源のACコンセントにつないだ機器の消費電力で変わってきます。
一個のバッテリーを内蔵する1〜3万円のUPSの場合、ディスプレイとPC本体(5K iMac)などであれば、3〜5分程度は持ちます。その間に終了させることで、HDDのクラッシュをさけることができます。
バッテリーの期待寿命
UPSにある鉛蓄電池は、熱い環境に長く置かれると早く劣化します。
期待寿命は、20度以下という寒い環境で、月に数回動作するような(バッテリーを放電する)使い方をした時に、何年持つか?というものです。一般家庭での使用を考えた時、夏場の気温を考えると、期待寿命よりも短くなります。
ただし、停電になることは、夏〜秋の台風や落雷による停電や、冬場のドライヤーなどの使いすぎでブレーカーが落ちるくらいしかないので、バッテリーを放電してしまうような停電は、想定より少ないと思います。
我が家では、4〜5年で交換しています。
家庭用のUPSの主なメーカー
私も愛用している三社の製品を紹介します。
APC(エーピーシー)
日本で、最も人気のあるUPSのメーカーです。私も歴代を15台使ってきました。価格も1万円台で買えますからね。
常時商用給電方式です。
瞬間停電を完全に防ぐことができません。
パソコンのATX電源が古くなってコンデンサが弱ってくると、このUPSのバッテリーの劣化が進むと瞬間停電が防げないのでトラブルになります。
長く使ってきたので、バッテリーの劣化など勝手が分かっているので愛用しています。
中の鉛蓄電池が、入手しやすい12V / 7.2Ahなので、扱いやすいという点があります。
白のボディでしたが、最近のモデルは、黒になりました。
シュナイダーエレクトリックという名前でOEMで売られています。Smart-UPS 750 というタイプは、ラインインタラクティブ方式です。(apc)
おすすめの RS550は、
- 鉛バッテリー 12V 7.2Ah
- サイズ:19 × 31 × 9.1 cm
- 重さ:7.8Kg
オムロン(OMRON)
日本の京都の電気機器メーカーです。産業用電源メーカーとしても有名ですね。
一般家庭用のUPSも、APCに対抗して安いモデルがでてきたので、今は、こちらがおすすめです。
私も最近は、オムロンの常時商用給電方式の安い方を買っています。
少し高い(といっても数千円の違い)ですが、ラインインタラクティブ方式も3万円で買えます。
安いモデルは、専用の鉛蓄電池(別売で1.2万円ほど)です。
おすすめの BW50T は、
- 専用の鉛バッテリー
- サイズ:9.2 × 28.5 × 16.5 cm
- 重さ:4.65Kg
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オムロン 無停電電源装置 UPS BW55T レビュー。常時商用 正弦波 340Wまで。
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CyberPower(サイバーパワー)
台湾のUPSメーカーで、コスパが良く、高性能で格好が良いので、私も使っています。
起動時に、1KWの電力が必要な PowerMac G5やPowerMacを安定させるには、1200Wという大容量のUPSが必要でした。CyberPowerのUPSはコスパが良かったので、日本でのデビュー当時から、我々のようなMacのヘビーユーザには人気でした。
このサイズだと、鉛蓄電池は二個搭載します。
ラインインタラクティブ方式でも、オムロンより安いんです。だから、信頼のOMRONか、コスパのCyberPowerか?の二択になって、APCを買う人が少なくなりました。
特に、CyberPower の「正弦波出力&ラインインタラクティブ型UPS」は、2.2万円でAmazonで売られています。私も、今後は、CyberPowerが第一選択になります。
おすすめのCPJ500は、
- 鉛バッテリー 記載なし
- サイズ:9.2 x 16.5 x 28 cm
- 重さ:3.7Kg
まとめ
UPSの記事を書くための、用語解説のためのページです。アンカーで参照するために作りました。
ハイエンドのデスクトップパソコンを使う人は、UPSは必須でしょう。とくに、4,5台のHDDを使ったRAIDシステムで、大容量の高速な読み書きをするストレージを使っているユーザは、瞬間停電によるデータクラッシュの損失は半端ないと思います。UPSは、日頃のバックアップとそれ以上の保険です。
「UPSのウンチクをロクに語れないのに、エラそうにガジェット云々を語るな」と私は言っていました。しかし、今はバッテリー内蔵のノートPCしかもっていない人が増えたので、UPSが必要な人がいなくなりました。
ストレージがHDDから、フラッシュメモリーのSSDにかわり、Windows 10やmacOSのファイルシステムが良くなったので、途中で電源が落ちても、データが壊れたり、ストレージ自体が壊れることもなくなりました。