キヤノンの単焦点レンズ 【EF-S 35mm F2.8 Macro IS STM 】を購入し、2年ほど使っているので使い勝手などをまとめ
ました。
EF-S 35mm F2.8 Macro IS STMは、日々の歯科診療で記録として撮る口腔内写真を、リングフラッシュなしで、誰でも簡単に一人で撮れるようになった画期的な接写レンズ(LEDリングライト付き)です。
↑この私の前歯部正面観は、カメラの知識ゼロ、日頃はコンデジしか使ったことのない妻に、EOS Kiss X8iを手渡して撮らせました。(茶渋などの歯の汚れは、自費治療のホワイトニングで使う塩粉のプロフィーのテストのために、日々努力して付けています。)
「口腔内写真の撮影方法」という本が何種類も売られています。そんなものを助手に読ませなくても、一言二言の指導で綺麗な写真が撮れるようになります。
EF-S 35mm F2.8 Micro IS STM って何が違うの?
キヤノンの一眼カメラ用交換レンズの型番は、それぞれのレンズの特性を表します。
キヤノンレンズの型番別解説
- EF-S:EFマウント形式。「-S」は、APC-Sの安いデジタル一眼専用
- 35mm:焦点距離が35mmの広角、APC-Sだと56mmに相当
- F2.8:絞りの最大開放明るさ、2.8はマクロレンズだと明るい方
- Micro:最大撮影倍率が1倍。(1/2倍以上ならマクロと呼ぶ)
- IS:手ぶれ補正機能内蔵
- STM:ステッピングモータ式の自動ピント調整機能付き
EF-S 35mm F2.8 Micro IS STM で できること
このレンズの特長をざっくりと箇条書きにします。
- 左右にLEDライトが付いていて、強弱、左右の点灯分けができる
- 35mm、APC-S専用のため、EOS Kiss X8iなどでは、約56mm換算となり標準レンズ相当のマクロレンズになる
- 手ぶれ補正機能内蔵レンズ
- 自動ピントのモータの動作が速い、ピントも正確に合う
- 190gとオートフォーカスのマクロレンズとしては軽い方
- 対物へ 13cm(レンズ先から3〜4cm)まで寄れる
- ズームレンズのようにレンズ筒が飛び出ないので撮影対象物(患者)にぶつけない
- LEDライトは、レンズフードをつけると使えない
- 保護フィルター(49mm径)は、レンズフードにつける残念仕様
LEDライトは、レンズフードを付けると隠れてしまいます。しかも、保護フィルターは、レンズフードに付けるという…。
さて、以上を踏まえて、
EF-S 35mm F2.8 Micro IS STM を写真で紹介
同梱物は、
- EF-S 35mm F2.8 Micro IS STM 本体
- レンズ保護キャップ、マウント保護キャップはレンズに付いている
- レンズフード
- 他のレンズと共通の取扱説明書
- 交換レンズ保証書
です。
EF-S 35mm F2.8 Micro IS STM のレンズ先観
レンズ口径は小さいですね。白いLED部のリングの内側に、ネジが切ってあります。レンズフード(ES-27)をねじ込みます。
ネジは、こっち側にあります。
多灯ストロボ(スピードライト)か、照明が別にある場合は、レンズフードを装着して使います。
白いLEDのリング部分をカバーして、表面の光沢がある被写体を接写する時に、丸い白い像が映り込まないようにします。
スピードライトで天井へ間接照射しつつ、レンズ先のLEDライトも使う事もできます。カメラのTTL自動調光のおかげです。
仕事で、レンズ先のLEDライトを使う時は仕事に使います。ブログでレビュー記事用の写真を撮る時には、スピードライトとレンズフードを付ける ってのが、かなり面倒なので、最近は付けません。4万円のレンズですので、使いつぶすことにしました。
一応、キヤノン純正の保護用フィルター 49mm径を買って付けました。ブログ用に特化するなら、レンズフードとプロテクトフィルターは付けっぱなしでいいでしょう。レンズキャップをしなくていいですからね。
レンズフードは、表にしても裏にしてもネジでハマるようになっています。でも、こういうマクロのような特殊レンズのレンズフードには、表しかないものもあります。
このレンズフードES-27も表でしか付けられません。裏側を前にして、レンズフードがネジで止まらないぞ!と焦る人もいるでしょう。
純正のIS(手ぶれ補正)、STM(オートフォーカス)のための制御用端子がついています。
シグマやタムロンなどの互換レンズとはちがって、キヤノン純正なので特筆すべき事はありません。
EF-S 35mm F2.8 Micro IS STMをEOS Kiss X8iに装着する
交換レンズを交換するときに、新品の交換レンズを一番最初に本体に付けるときに、キツくてレンズが回しにくいことがあります。
白い□の印にレンズの印を合わせてはめ込みます。
カメラを落とさないようにしっかりとつかみます。レンズと本体のマウント部分をゆっくりと合わせて、カチリと音がするまでレンズを回しましょう。あわててカチャカチャやると壊れることがあります。
ただしくハマっていないと、オートフォーカスや手ブレ防止機能が動作しません。
レンズの左側面です。
撮影する時は、左手はレンズと本体下に手を添えて支えます。その時に、左手親指がAF/MF(ピントの自動か手動かの切換)スイッチと、手ぶれ防止機能のオンオフできる位置に配置されています。
フォーカスリング(ピント調整リング)は、軽く滑らかに動きます。かといって、指を離すときにずれません。
フルタイムマニュアルは使えない
オートフォーカスで合わせた後、ピントを合わせる位置を変えたい時に、AF/MFを切り替えずに、フォーカスリングを使えば、ピントの前後を自分でかえることができるレンズがあります。
このレンズはそれが使えません。フルサイズ用はできるのに…安物はだめポ。
EF-S 35mm F2.8 Micro IS STM レンズ先のLEDのつけ方と消し方
レンズ先についているLEDライトは、レンズの左側面の下側にあります。
両手でカメラを持つとき、左手はレンズとボディを下から支えますから、ちょうど左手親指で押せる位置にあります。
LEDの操作方法
- 短押しで、左右のLEDが点灯します。明(強)で点灯 → 暗(弱)で点灯 → 消灯
- 長押しで、左側のLEDが明(強)点灯します。短押しで、暗(弱)で左LEDが点灯 → 明(強)で右LEDが点灯し左LEDが消灯 → 暗(弱)で右のLEDが点灯 → 消灯
になります。
特に難しい操作ではありません。なんどかボタンを押せば、LEDライトの点灯の挙動はわかるでしょう。
ちなみに、このLEDライトの電源は、内蔵ストボロと同じでカメラのバッテリーを使います。バッテリーの消費量はそれなりにありますから予備のバッテリーは常備しておきましょう。
EF-S 35mm F2.8 Micro IS STMのスペックを詳しく
公式のスペック表を参考に表にしてみました。
レンズ構成 | 6群10枚 |
絞り羽根枚数 | 7枚 |
最小絞り | 32 |
最短撮影距離 | 0.13m |
最大撮影倍率 | 1倍 |
フィルター系 | 49mm |
最大径 × 長さ | 径69.2 × 55.8 mm |
重さ | 189g |
最短撮影距離 0.13m、つまり、13cmです。撮影距離は、焦点距離とも言います。焦点距離は、被写体とフィルム(センサー)まで距離のことです。
最短撮影距離 13cm ー (レンズの長さ7cm+カメラのマウントまでの距離3cm分)= 3cm
レンズ先、3cmまで寄れる事になります。
この最短撮影距離で、フィルム(センサー)に投影される像は、1倍、つまり等倍になることで、このレンズは、マクロレンズということになります。
マクロレンズ
フィルム(センサー)に投影される被写体の大きさが、1/2倍以上のものをマクロレンズと言う。
昔は、レンズの持つ樽状の歪みを嫌って、望遠レンズのマクロモードを使って離れたところから、三脚を使って撮ったこともある。
三十年ほど前、マクロレンズとリングフラッシュが一体になったNIKONのメディカルニッコールは、200mmや120mmの望遠マクロレンズを使っていた。これが、病理をやる医者と歯医者にNIKONユーザが多かった理由でもある。
EF-S 35mm F2.8 Micro IS STMで撮れる写真について
- 35mmの広角ですが、APC-Sのデジタル一眼カメラにつけて使うため、56mmの標準レンズと同じ画角になる
- 絞りを最大に開けばF2.8と単焦点レンズとしては、普通のレンズなので、浅い被写界深度のボケまくった写真をとることができる
- 単焦点だけど、周辺のわずかな歪みやピンボケは、実売4万円のレンズでは仕方がない。
という特長があります。
標準レンズで全開のF2.8で使うのは、カメラ初心者丸出し!
絞りを開放すると、被写界深度が浅くなります。つまり、ピントが合いづらくなります。
だから、明るいレンズは、絞って使います。被写界深度が浅い写真は、前後が派手にボケて見ていて気持ちの悪い写真になります。
食レポのボケボケ写真が、多すぎる問題
一眼カメラの交換レンズを買った初心者が、例外なくやらかしています。
「シズル感が〜」と、ブロガーのオフ会で食レポのブログ記事についてエラそうに語っているカスのブログの写真も、被写界深度が浅すぎるものばかりです。皿一枚の料理が何があるのか?ボケてよく分からないんです。
ラーメンのトッピングについての話の下りで、半熟卵にしかピントがあってなくて、前後がボケボケ(笑)なんですよね。手前のもやしと後ろのシナチクのかんじがよく分からない。海苔のパリッと感がボケていてわからない…。
標準〜望遠レンズを使う時、通常、F6前後かそれ以上で使います。モードは、絞り優先(Av)です。
我々が仕事で使う時は、もっと絞って、F11〜20とかになります。最近は、ISO感度を勝手に上げてくれるので、シャッター速度が遅くなってブレブレになることはありません。
ただし、絞ると暗いので、ISO感度を1600や3200とかに勝手に上げられて、画像ノイズが増えてしまうので、フル・マニュアルの設定で、ISO感度を400や200に固定するのもありでしょう。
その辺の設定は、各自試写を繰り返して撮影条件を煮詰めていきます。
今は、パソコン上で撮影データをいじれます。だから、値段の高いカメラなら、プログラムモードで、露出を明暗普通と三連写で変えながら撮影して、パソコン上でRAWデータで重ねてハイコントラストな一枚の画像にするなんてことも、一括処理のワンクリックでできます。
上顎咬合面観を素人が撮ると…
手ぶれが起きています。でも、これ、ズブの素人の妻が、左手でミラーをもって、右手だけ(片手)でEOS Kiss X8iを持って撮っているんですよ。
妻は、カメラに全く関心がありませんから、撮り方も知らない、シャッターボタンの位置すら分からない素人です。彼女に、1分ほど教えて撮ってもらいました。それで、このレベルの写真が撮れるんです。
私はチェアーに寝ておらず座位で撮ってもらっています。しかも、照明は天井の蛍光灯のみ。診療無影灯や補助光なしです。
そんな悪条件下でも、こういう写真がチャッと撮れるんです。もう、「サービス残業したくない、給料上げろ、研修行かせろ、トイレ掃除は助手にさせろ」っていう意識高い系を気どる衛生士はいりません。
口腔内写真撮影における EF-S 35mm F2.8 Micro IS STM の問題点
左右のLEDの点灯する位置がレンズに近すぎる
ソニックテクノの専用LEDライトやリングフラッシュは、「正面観撮影における前歯部のハレーションと臼歯部が光量不足になる問題」をリングフラッシュの発光照射分布を調整することで解決しています。
EF-S 35mm F2.8 Micro IS STMのLEDライトでは、この問題を解決できません。
前歯部正面観撮影で、臼歯部に光量が足りないので、臼歯部に合わせてISO感度を上げたり、シャッター速度を落とすとブレや画像が荒れます。ISOを400か800で固定するれば、さらにシャッター速度が落ちて、1/2〜1/10のシャッター速度になってしまいます。
レンズ先が軽いことが災いして、天然のスタビライザーとして機能しません。レンズ内蔵の手ぶれ防止機能に頼ることになります。
それも、何枚か撮って撮り方の工夫や調整をすれば、そこそこの写真が撮れるようになります。
いままでのマクロレンズにリングフラッシュを付けたカメラは、重く取り回しが悪いものでした。
そのため、女性一人で、右手でカメラを持ち、左手でミラーを持ったり、患者に持たせたミラーの曇り防止のエアをかけながらの撮影ができませんでした。
このEF-S 35mm F2.8 Micro IS STMとEOS Kiss Xの組み合わせなら、一人で6枚撮影、12枚撮影ができます。
症例検討会や学会に提出するガチの綺麗なものではなく、日常の臨床で患者に説明するためにとカジュアルに撮る写真なら、十分な品質で撮影ができます。
標準レンズの焦点距離のために、等倍撮影で患者に近づきすぎる
等倍だと、レンズ先3cmです。患者の目の前にカメラと撮影者の顔が近づいてきます。ライブViewモードで液晶画面を見ながらやれば、顔だけは近づけなくて済みます。
私は、患者に口角鉤やミラーを持ってもらって撮影に積極的に参加してもらう主義なので、患者もそっちに集中するから、近づきすぎる問題は小さいのかもしれません。
近づきたくないのであれば、(105mmのタムロンのとか)望遠のマクロレンズと自作か既製のLEDリングライトやステレオライト、リングフラッシュをつけた、従来のシステムで対応しましょう。
EF-S 35mm F2.8 Micro IS STMは、どんな人や用途におすすめか?
- 日頃から、マクロ撮影をする仕事の人
- 研究職で、日々の成果を記録する人
- ブログでレビュー記事を得意とする人
標準レンズ相当の焦点距離であり、F2.8と比較的明るいレンズで、マクロも撮影可能ですから、ブログのための写真を撮るのに、これほど適したレンズはないと思います。
固定焦点レンズなので、被写体とカメラの距離を正確に位置決めできる治具さえ用意すれば定格写真が撮れます。年月経過の変化も写真での比較が可能です。
組み立てキットを購入しての製作記事や、紹介記事の写真の場合、シーンインテリジェントモードだと、F2.8の開放で撮ってしまうため、手前だけしかピントが合いません。
絞り優先Avモードで、F7程度まで絞って被写界深度を上げてから、寄って撮るようにしないとダメですね。ISO感度を400以上に固定すると、シャッター速度が、1/10以上になるので三脚とリモコンが必須です。
まとめ
カメラの記事は書いていて楽しくないです。
我々医療業界ってのは、かつての黄金時代の栄華を謳歌した世代を親に持つボンボンやお嬢様が大半を占めているのでカメラ道楽・マニアが非常に多く、写真家との二足わらじの人もいます。
ほんと、カメラ好きのカメラ自慢にはウンザリしています。
「撮り鉄」のマナーの悪さも注目されています。「ニワカのカメラ好き」には、撮影会や風光明媚な撮影ポイントで傍若無人に振る舞う人が多ぎます!
検索上位を占めている アフィリカスブロガーが書く、カメラやレンズ関連の記事が、素人以下のレベルの記事で、まったく参考になりません。
だから、私が書きます。
EF-S 35mm f2.8 Micro IS STMは何と組み合わせるといいですか?
キヤノンのEF-Sマウントなので、カメラ本体はAPC-Sのセンサーを使う、どのグレードでも使えます。
ミラーレスは軽い反面、右手片手では持ちにくいので、グリップの付いた軽いEOS Kiss Xシリーズと組み合わせるのがベストでしょう。
繰り返しますが、LEDライトを使う時は、49mm径の保護フィルター付きのレンズフードは外します。
まぁ、1本4万円ですので、血しぶきを浴びたり、だ液をかぶったら、清掃調整のために修理にだすか新たに買い直しましょう。