田舎の夏といえば、草刈りです。草刈り機の回転刃のことを「チップソー」と言います。このチップソーは、3時間程度使うと切れなくなります。とくに、石ころや岩の多いトコロだと、刃先が欠けてあっという間に切れなくなってしまいます。
今回は、
チップソーの研磨機について紹介
します。草刈り機の「回転刃の目立て機」とも言います。
切れなくなった草刈用の回転刃(チップソー)を研ぐ方法は、2つ
- ハンディ・グラインダーにダイヤモンドディスクを付けて万力に固定、チップソーを手に持って刃先を削る
- チップソー専用の研磨機をつかう
があります。昔は、(1)のチップソーを手に持って、固定したグラインダーにチュインチュインと当てて刃先を削るという、非常に危険な作業をしていました。今は、(2)の専用の研磨機が安く売られているので使っています。

この手の研磨機でコスパ最高のDケンマー
このDケンマーは、我が家では2台目です。うちの年寄りが生前に使っていたチップソー用の研磨機が大きく重く使いにくい上に錆びて使えなくなったので買い換えました。
Dケンマー(フジ工業)を、Amazonで9千円で買いました。
Dケンマーの同梱物
- Dケンマー本体
- Dケンマーの治具(ジグ)固定用六角レンチ
- チップソー研磨専用のチップソーグラインダー
- ダイヤモンドディスク(研磨用ディスク)
- ディスク交換専用 かに目スパナ
- グラインダーのモーターの交換用カーボンブラシ1組
- 取扱説明書、チップソーグラインダーの取扱説明書、説明DVD
草刈り機の刃を研ぐ研磨機はグラインダーが別売のものが一般的です。しかし、Dケンマーには毎分6千回転(6000r.p.m.)の低速ハンディーグラインダーが付いています。
通常のハンディ・グラインダーは、毎分1万回転程度のものが多いと思います。無段階変速タイプは価格が高いし、空冷が効かないので長時間使えないというデメリットがあります。
グラインダーまで付いて、9千円で買えるものが他にありません。
Dケンマーの組み立てで注意すべき点
まず、ディスクをグラインダーに取り付ける
ハンディグラインダーを日頃から使い慣れていれば、特に戸惑うことはないでしょう。しかし、初めての人にとっては、フランジの裏表の使い方を間違えると、ディスクが固定できずに戸惑うことになります。

グラインダーのフランジはディスクによって表裏を使いわける
グラインダーのディスクを取り付ける時の注意点として
- 電源ACケーブルはコンセントから抜かれている
- 電源スイッチはオフを確認
- スピンドル(回転軸)を固定するロックピン(ボタン)を確認
- 固定用のフランジの表と裏の使い分け
があります。
ロックピン(ボタン)は、穴に入ると深く押せます。ロックピンボタンを押したままで、スピンドルを軽く回転させると、穴にはまり込んで深く押せる位置があります。それで、スピンドルの回転が固定されます。
特に、ディスク固定用のフランジは、厚みのあるディスクを付ける時と今回のようなダイヤモンドディスクのような薄いディスクを付ける時では向きが違います。外側フランジの表と裏を逆にする必要があります。

ディスクの厚さで、外側フランジの裏表を使い分ける
分厚い砥石ディスクを回転軸(スピンドル)に固定する時、固定するフランジは突起がある方をディスク側にします。ダイヤモンドディスクのように薄いディスクは、通常の突起のある方をディスクに向けてしめてもディスクが固定できません。
説明書の通りに、内側フランジ、白い樹脂リング、ダイヤモンドディスク、外側フランジの順で重ねて、ロックピンを押さえてスピンドルを固定してから、カニ目スパナでしめます。
次に、Dケンマーにグラインダーを取り付ける

しっかりと固定できるので必要最小限のシメで良い
Dケンマーと同梱されている専用のグラインダーなので、固定部分はピッタリです。他の研磨機は、グラインダーが別売なので無段階変速のグラインダーをつけると、太さなどのサイズが合わないため、そのままでは固定できないんです。
取り付けは、バンドをマイナスドライバーで緩めて、ACケーブルを通して本体を差し込みます。あとはネジですこししめるだけで、がたつかないくらいに固定できます。
このグラインダーの本体は樹脂製なので、しめすぎは壊す可能性があります。説明書には、モーターが過熱すると書いてあります。本体にはモーターと空冷用のファンがついているので、モーターとボディの間の隙間がなくなると空冷に影響がでるということでしょう。

間に薄いシリコンゴムシートなどを挟むと緩みにくくなります。
炭素鋼の刃を削るときに出る火花は下へ
炭素鋼は固いので、ダイヤモンドディスクで削る時に火花を散らしながら削れます。グラインダーのディスクの回転はスピンドル(回転軸)に向かって反時計周りに回りますから、火花は下の台に散ることになります。
チップソーの刃の部分はディスクの回転方向にそって下に力がかかります。チップソーを載せる治具(じぐ)が、シンプルなのによくできていて、チップソーがディスクの回転に釣られて下へ行こうとする力を抑えてくれるので操作に不安がありません。
それでも念のために、防塵マスクと目を守るゴーグルは必ず付けて作業するようにしましょう。刃物を扱うので、手には防刃手袋が必要です。
Dケンマーの治具(ジグ)の問題点

位置の関係上、L型六角レンチにならざるを得ない
逃げ角と横すくい角の関係が約90度弱なので、逃げ角を削り出してから、横すくい角を削るという手順でやるので、この関節部分で動かすことになります。すこし抵抗がある程度までしか、しめていません。
元々、グラインダー側を固定して、チップソーを両手に持って刃先を削るというフリーハンドでやっていましたから、この治具があるだけでも、危なさが全然ちがうので助かっています。ってか、しっかりと固定して厳密にやる必要がないと思っています。
Dケンマーの台座部分が滑る問題
グラインダー付きで8千円という低価格には理由があります。このDケンマーの台座部分は、薄い鉄板の端を曲げただけの構造をしています。

枠の設置面積がないのでコンクリの上は滑る
コンクリートの棚など硬いものの上での作業は、振動で派手に動きます。組立て式の作業台には固定する治具がついているし、作業台の天板は通常、木なので、この台座の枠の金属部分が食い込むことで固定されます。
コスト面、可搬性を持たせるために、台座はこうなっていると考えれば、自分の作業環境を考えて、この台座にピッタリの板をハメこんで設置面積を大きくアップし滑らなくすることも可能です。あるいは、1.5cm厚のゴムスポンジを5×5cmを4つ 四隅に貼っても良いでしょう。
組み立ての作業台に、シリコンシートを敷いて置いて使うのが良いと思います。滑らないし、振動の音を抑えて、耐熱220度なので、火花が散っても大丈夫です。
その辺は、適宜、使い手の勝手に合わせて作り込みましょう。
草刈りの回転刃の研ぎ方(チップソーの目立ての仕方)
逃げ角の修正

あまり角度は関係ない
この逃げ角は、あまり切れ味に関係しないと思います。径が1cm以下の軟かい木の枝などを刈りはらうようなことが多い場合は、この逃げ角がきつめの方がいいような気もします。
逆に角度を付けすぎると先端が鋭角になりすぎて、すぐにチッピング(欠け)を起こして丸くなります。1時間程度で切れ味がおちて、ススキのような繊維強い系の草は切れずに撫でるようになってしまいます。
とくに、小石の多いところや凸凹のある地面、石垣の草刈りは、鋭角な部分をつくらず、すべてスクエア(直角)に削ることでチッピングをできるだけ抑えるようにします。
逃げ角と刃の長さの調整について
逃げ角の調整、つまり、回転刃の外周の刃の高さ(長さ)をそろえることになります。

長さをそろえるためにストッパーのボルトがある
チップソーの中心から、逃げ角部の外周までの距離が同じ高さ/長さになるように、ステンレスボルトの長いヤツがストッパーで止まるようにできています。

ケンマーのストッパー
このボルトが作業中に回って動かないように、固定用のナットが付いています。つまり、ナットを緩めないと ストッパーの長いステンレスボルトが回せず、長さが調整できません。

そもそも、グラインダーのジスクを回転した状態で、ステンレスボルトの長さを調整するなんて、なんのために固定用ナットがあるのか…
グラインダーのダイヤモンドジスクを回さない状態で、
- ストッパーの長さを調整
- 刃を乗せて、逃げ角にジスクが当たるのを確認
するようにします。

チップソーを乗せて長さを確認
こんなかんじですね。回転していないダイヤモンドジスクに、ぐっと押しつけて、削りシロ、0.2mm程度、しならせた長さでボルトを固定します。
十分に確認してから、グラインダーを回して作業してください。昨年から、この作業はしていません。
普通の草刈りでは、この逃げ角は付けずに、すくい角を直角に削って、90度の角を出すことで、切れ味が戻ります。
チップソーの横すくい角や山林用のアサリ角を付けない
私は、草刈り機の切れ味を良くするために、
- チップソーの横すくい角を鋭角
- 交互にすくい角を付ける山林用アサリ角
をしません。土建屋が請け負う、山林伐採や道路脇の草刈りではありませんから、作業効率だけでなく、チップソーの切れ味の長持ち、寿命とコストを優先します。

取説から
軟かい草木を切るのであれば、鋭角の方が切れます。しかし、炭素鋼は硬く脆いので、小石などが当たると鋭角の刃がチッピングという欠けを起こします。
切削工学的に、チッピングに耐えうる刃先の角度は90度なので、私は直角にしか削りません。

先端より、すくい角が直角に角が立っていればOK
大切なことなので繰り返します。

チップソーのすくい角、先端は直角がおすすめ
チップソーで切れ味が一番実感できるのは、先端よりも横すくい角に直角という「角」ができていることです。これが丸くなるほど草の切れ味が落ちます。
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大きく拡大して観察すると良いでしょう。
使い込んでみて、↓写真の刃の向きとは逆(刃を裏返し)にして、ジスクの左側を使って削った方が調整が楽にできます。
↓ の写真では、ダイヤモンドジスクの裏(右側)を使いたいので、こちらの向きにしています。

直角の刃が一番欠けに強い
そもそも、私が愛用しているのは、一枚数千円もする高級なチップソーではなく、230mm径36刃の中国生産の一枚500円以下という安いチップソーです。
安物のチップソーは、刃先の炭素鋼チップも小さく薄いので鋭角のすくい角に削ると簡単にチップが折れて無くなります。なので、すくい角は鋭角にせず直角のままです。
治具のアサリ角や横すくい角のための角度を調整する必要が無いのでネジは硬くしめたままです。
その作業行程がない分、目立て(研ぎ)にかかる時間が短縮できます。2〜3時間毎で交換するチップソーを5、6枚を一度に研磨することで時間と手間を省くことができます。
炭素鋼の刃(チップ)が、1/3〜1/4無くなったら破棄

欠け具合をチェックしつつ、破棄のタイミングを計る
石垣、コンクリート壁、U字溝、鉄パイプなどの柵の草刈りで、疲れてくると雑になって、硬いものに刃を当ててしまいます。すると、こんなかんじで何カ所も炭素鋼の刃部分が欠け散ってしまいます。
まだ部分的に炭素鋼チップが残っているところは、横すくい角を平らに削って直角の刃をつけます。
炭素鋼チップが、36個(255mm径なら40個)の内、1/3の12カ所がなくなったら、破棄します。一枚500円の中国生産のチップソーでも、目立てし直すことで2,3回使えますから、さらにコスパは良くなります。
まとめ
切れの良い状態のチップソーを2、3時間で交換するには、その手間と時間がかかります。
しかし、切れが良い状態で草を刈りつづけられるので、刈っている私のストレスは格段に少なくなります。エンジンの回転数を抑えることができるので草刈り機の燃費が良くなります。
切れ味が良いと、ひとなでするだけで綺麗に刈れますよね。クソ暑い中での草刈り作業も効率がアップします。単位時間あたりの刈れる面積も広くなりますよ。
もともと、このDケンマー自体が8千円前後と安いので、(草刈りの規模にもよりますが)1〜2シーズンで元が取れます。
三台を、それぞれ、逃げ角、アサリ角交互分を固定したままで並べておいて、数十枚単位で1度に作業するようにしている村の地区もあります。草刈り隊に貸し出す時に使います。