スマホやタブレットのワイヤレス充電で、充電規格【Qi(チー)】があります。私も8年前、Nexus 7(2013)を買ったのをきっかけに、Qiの充電スタンドを買って使っています。
以来9年間、Qiを使ってきて思うに、
- 置き方がシビア
- 充電速度も遅い
- 発熱がひどい
- ノイズが発生する
など問題点やデメリットが多く、ケーブルをつながないで充電できる点を除いて何のメリットもないのが現状です。
2017年9月から新発売のiPhone 8やX(テン)がQiに対応したとのことで、
ワイヤレス充電規格 Qi(チー)について、使い方とか問題点をまとめ
ておきます。
Qi って何?
Qiは、チーと言います。「qi」の中国語読みです。Qiは、電磁誘導の原理を使う、USBのコネクタなどを使わないで充電の電流を流す仕組みの国際規格です。
電磁誘導の原理は、理科(物理学)で習いますよね。
コイルに交流(プラスマイナスの電圧が変化する電流)を流して発生する電磁波で、近接する別のコイルへ電流が流れる現象です。
電柱の上にある変圧トランスが一番身近な存在だと思います。電柱の電線に流れている6600V(ボルト)の交流を家庭用の100Vと200Vに電圧を落とす装置です。
オール電化の家にあるガスコンロの代わりにある電磁調理器は、電磁コイルの上に鍋やフライパンをおくことで、鍋底に渦巻き電流を流して電熱線と同じように発熱させます。
Qiのスタンドやパッドの充電器も同じように、電流をコイルを使って電磁波にかえて、スマホ(タブレット)側のコイルでその電磁波から電流を作ります。
- 充電器の送電側を充電スタンド(一次コイル側)
- スマホなどの受電側をレシーバ(二次コイル側)
と言います。
電磁調理器と同じ原理と構造なので、誤動作をすると火事(プチ焦げ)になります。そこで、誤動作しないように充電スタンド側とレシーバ側で通信をして電磁波を送ってもらう仕組みになっています。
電力伝送方式の分類は、「磁界結合方式」です。
最新のワイヤレス電力伝送については、トラ技の特集を読んでください。
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Qi って どう使うの?
Qi対応のスマホやタブレットは、裏面にコイルを内蔵しているので、Qiのスタンドだけあれば充電できます。
Qi対応のスマホやタブレットは、充電台に置けば充電ができます。
Qiのワイヤレス充電で、注意するべきことは?
- ワイヤレスなので大電流を流せないから急速充電はできない
- Qiの向きがあって、充電台に正しい向きで、密接して置かないと充電が始まらない
- 寝る前に充電台に置いておいて、ただしく充電ができているか?の確認をしなかったばかりに、朝起きて充電できていなくて焦る
- 分厚いケースにいれると充電できない
- 最近の中華のスマホスタンド型の充電台は、充電が速いがスマホやタブレットがかなり発熱する
等があります。
Qiに対応してないスマホやタブレットはどうするの?
Qiのワイヤレス充電に対応してない場合は、レシーバーと呼ばれるコイルの部品とケーブルでmicroUSBやLightningケーブルでスマホにつないでやると使えるようになります。
iPhone 5sの場合
Lightningコネクターにつなぐレシーバーを付けて使います。
レシーバーのサイズは、83.5 × 47.6 × 0.5 mm 6.3g です。一見薄いパックのように見えますが、コイルが入っているので、6.3gもあります。
こんなかんじで、Lightningjケーブルのコネクタに、レシーバのケーブルコネクタを挿して、バックケースで固定します。透明なので、レシーバーの具合がよく分かりますね。
iPhone 5sも古くなったので、バッテリーが弱っています。安物のAndroidスマホ並に一日しかバッテリーが持たなくなりました。
そこで、充電台にポンと置くだけで充電が始まるのは、助かります。
ワイヤレス充電対応してないiPhoneに Qiレシーバをつけて対応させる問題点
- MacのiTunesへバックアップを取ったり、iOSの更新などでつなぐ場合は、いちいちケースを外して、レシーバのケーブルを外す手間がかかる
- レシーバの取り外しで手荒に扱うと、疲労に弱いリボン状のLightningケーブルを傷めて断線する(私も、これは2枚目)
- 粗悪な充電台の発生するノイズでWi-FiやBluetoothがつながらない
誘導コイルに電流を流しますから電磁波が大量にでています。その電磁波が大きく漏れてノイズとして周辺に悪影響をもたらします。
当時、妙に安い、試しに買った中華の充電台に載せるとWi-Fi接続ができないものもありました。Bluetoothも2.4GHzの無線ですから、パソコンへつないでいるワイヤレスのキーボードやマウス、ヘッドセットが使えないので困りました。
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後述するパナソニックの充電台などでは、そういった問題は一切起きていません。
iPhone SEや、iPhone 7以前のユーザで、Qiによるワイヤレス充電をやりたいのなら、このようなQiのレシーバアダプターをつけることで解決します。
MIYABI(Androidスマホ)の場合
一万円で買えるAndroidスマホの欠点は、バッテリーの持ちがiPhoneに比べて悪いことです。Androidスマホこそ頻繁に充電するので、このワイヤレス充電の後付けになるレシーバが必要です。
Androidのスマホ用のレシーバは数が豊富で安価です。ただし、micro-Bのコネクタの向きだけは必ずチェックして買いましょう。
レシーバには表と裏があります。自分のAndroidスマホのmicroBのジャックの向きがどうなっているのか?必ず確認して買いましょう。
私のMIYABI(FREETEL)のmicroB-USBポートは、液晶画面側が狭く裏面側が広い向きになっているので、それ仕様のものを買って付けています。
私が愛用しているQi充電台の紹介
充電台には、
- そのままスマホやタブレットを置いて充電する(平置き)皿型
- スマホなどを立て掛けて使うスタンド型
の2種類があります。
Apple Watch Series 3などをまとめて充電できるAppleの充電台「AirPower」は、皿形です。
パナソニック QE-TM102
Qi規格を策定するときに、日本のメーカーとしては三洋電機が参加していました。ブランド「エネループ」のモバイルバッテリー充電池をQiで充電する台として注目を浴びた頃があります。
三洋電機のバッテリー事業は、パナソニックが引き継いだので、日本の家電メーカーとしては、Qiの本家本元としての充電台です。
日本語の取説とQiの充電台本体、ACアダプター(QE-AP107)がつきます。
QE-TM102のサイズは、178×115×16 mmで、重さは160gです。
一見、AppleのAirPowerの黒バージョンのようですが、送電用のコイルは中央に一つだけなので、qiのロゴのところに正しく置かないと充電できません。
ACアダプターは、12Vです。DCケーブルは、2m。DCプラグは、外径5.5mm、内径3.3mmの入手性の良いものが使われています。定格でも、12V /650mAなので、独立電源系で使う場合は、DC/DCコンバータをそれに合わせて自作してください。
QE-TM102の良いところ、悪いところ
QE-TM102の使い勝手をざっくりと個条書きにすると
- スマホやタブレットを載せる皿なので、設置場所を広く取られる
- スマホやタブレットが正しく置かれて認識されない限り、赤くLEDが点灯して充電してくれない
- ソフトケースなら滑らないけど、ケース無しのスマホやタブレットは、QE-TM102の上で滑るので注意
- パナソニックの製品なので、誤動作による問題は無いだろう
- 充電時間がかかるものの、スマホやタブレットが異様に熱くなることがない。
QE-TM102を買って、1番残念だったのは、これだけ広い置き場所を占有しながら、スマホやタブレットの置き方をシビアに要求することです。
この赤いLEDランプが付くと、充電できないよ っていう警告なので置き直します。
iPhoneがQiに対応したことで、手帳ケースでもQiの電磁波を通すように配慮されたものになっています。
Qiは発熱するので、手帳ケースは開いたままにして放熱しましょう。パナのQE-TM102は、充電が遅いので発熱が少ないデメリットのおかげで、フタを閉じたままでもいけますよ。
無造作に置いても大丈夫だと思いきや、気を使って置かなければならないのが不満です。それに、専用のACアダプターが必要なのも、ACコンセントが一杯な状況での使い勝手が悪いです。
日本のパナソニックの製品なので安心感はあります。
大切なことなので繰り返しますが、充電時間がかかるものの、スマホやタブレットが暖かくなる程度で、あっちっちの過熱状態にはなりにくいです。
AUKEY LC-C1 Qi準拠ワイヤレス充電スタンド
ここ数年で、中華のガジェットブランドが次々とQi準拠のワイヤレス充電スタンドを出しています。この「準拠」がくせ者で、Qiの欠点である分厚いケースには反応しない、充電が遅い問題を解決するべく、いろいろと工夫をしているようです。
Ankerによく似た中華のガジェットブランド オーケイ(AUKEY)の充電スタンドを使っています。たしか、Ankerの方が後発です。
本体は、足を取り付けて組み立てます。足が本体に取り付けにくいので注意してください。1mのmicroBのUSBケーブルがつきます。マルチリンガルの説明書が付いています。
ACアダプターは、LC-C1には付いていません。「スマホやタブレットを充電につかっているAC-USBアダプターがあれば、それを使ってくれ」なんですね。
なので、AC-USB充電アダプター「PDP600510W」につないで使っています。
もちろん、AnkerのPowerPortシリーズのUSBからケーブルをつないでも同じです。
スマホなどを載せて充電を開始すると、緑のLEDも点灯します。スタンドの向こう側にあるにもかかわらず、明るいので光沢のある机やディスプレイの足などに反射して眩しいかも知れません。
最近の中華のQiのスタンドは、いろいろと工夫されているようで、スマホの向きは決まっているものの、安定して充電できるものが多いと思います。
特に、送電側の一次コイルを2つ、3つと搭載して、受電(レシーバー)側のスマホやタブレットの置き方が無造作でも、充電できるような工夫がしてあるものが増えました。このLC-C1も、3つのコイルを持っていると説明書に書かれています。
机の正面のディスプレイの脇に置いています。スマホやゲーム機のWi-FiやBluetoothのヘッドセットへの影響を疑うような不具合は、どのガジェット類へも起きていません。
しかし、コイルが多い分、ラジオや無線機の周波数帯へのノイズは無視できません。
充電時間も少し短くなります。その分、スマホが過熱気味になることがあるので、初めて使う時は熱がどれくらいでるのか? 観察しながら充電した方が良いでしょう。
私の(レシーバをつけた)iPhone 5sは、このLC-C1で充電できるものの、かなり熱くなるので、特に急がない時はパナのQE-TM102に置くようにしています。
Qiの充電時にでる電磁波をオシロで見てみた
Qiの電磁波が、どれくらいの周波数で発振しているのか?をオシロで観察してみました。
オシロで見るためには、ピックアップ用の簡易コイルをリード線で数回ループにしたものを使いました。Qiの充電台とスマホのレシーバの付近にいれて測ります。
まずは、テクトロのビンテージ オシロ、2465Bで見てみます。電流を伝達するためには、高い周波数で発振しているはずですから、波形は見えるはずです。横軸は、5μ秒です。ってことは、100kHzくらいの発振周波数を使っているようです。
テクトロのデジタル トイ オシロ(TBS1200B)で見てみました。
デジタルオシロは、おもちゃとはいえ、定周波であれば、周波数が自動で測定されて表示されます。107kHzであることが分かりました。100kHzチョイの周波数帯は、電池で点灯するLEDライトの駆動IC(DC-DCコンバータ)で使われています。
なるほど、100kHzレベルの発振による電磁波を送っているわけで、これではラジオのAM(500〜1700kHz)に影響がでるのも、うなづけました。
車載のQiの充電スタンドも数多く売られるようになりました。カーラジオへの影響がないか?の検証をしていない、Qiのレビューをしている人の記事は、その諸々のスキルの低さから、まったく当てになりません。 波形の一つもブログに載せられないようなヤツが… ってことです。
Qiの充電器を自作したい人向けに評価ボードの販売
ロームが、評価ボードを通販サイト経由で販売していました。
http://www.rohm.co.jp/web/japan/qi-support(リンク切れ)
チップワンでも販売しているので、(安くなれば)一つ買って、いろいろ遊んでみようかと思っていました。
3Dプリンターなどを持っていて、他と違うものを作りたい人も、中華の怪しいパチモンとは違う、日本メーカーのちゃんとした部品を使えます。一枚4万円ですが(笑)。
他、これはと思ったQi製品を買ったら追加していきたいです。
まとめ
Qキワモノ扱いだったワイヤレス充電「Qi」は、(当時は)最新モデルiPhone 8とiPhone X で採用されたために、一躍メジャーの充電規格として脚光を浴びなおしました。
誘導コイルを使う原理上、ノイズが派手にでます。実際に、これらの充電台の横にラジオを置いて聞くことはできません。
それでも、携帯電話回線やWi-FiやBluetoothの2.4GHzや5GHzの高い周波数への影響はないように作られているようです。
昔は、粗悪品が多くて使えないイメージが強かったQiですが、今はマシになってきてます。
iPhone 8での対応のニュースで、Qiって何? 使えるの?と思っている人への参考になれば、幸いです。
Qiって、1m以内に近づいたら充電できるものはないの?
いったい、誰のデマでしょうか? それって、1mではなくて、1mm以内の間違いでしょう。
1mも離れたところへ電磁誘導で充電できる電磁波は、凄まじいものになります。電波法的にもアウトだし、そんな恐ろしい電磁波が体にまったく影響がないわけはないレベルです。